憂鬱な午後の一息
ふと窓の外を眺めれば、灰色の風景が広がっている。
11月も半ばを過ぎ師走の足音も近づきつつあると言うのに、今日も雨はやむ気配が無い。
『底冷えのする寒さ』
今朝のニュースで女性アナウンサーが言っていた、そんな言葉が頭をよぎる。
こんな日は暖かい物でも飲みながら、ゆったりと窓辺で時が流れるのを楽しむのもいいのかもしれない。
普段仕事に追われ、ゆったりとした時間を過ごせない自分にとって、午後のコーヒーブレイクは一日の休息の中でも唯一といっていい楽しみの一つなのだ。
「確か差し入れで貰ったドーナッツがあったな・・・」
そんな事を呟きながら書斎のドアを開け、キッチンスペースに向かう。
退屈な仕事から解放され、自然とキッチンへ向かう足取りも軽い物となっている。
人間なんて本当にげんきんなものだ、なんて思ってしまう瞬間でもある。
キッチンにたどり着くとすぐに、編集の人間から貰ったドーナッツの箱を見つける。
箱の中を覗き込むと、オールドファッションやフレンチクルーラーなどの定番的ドーナッツが並んでいた。
私は普段は甘いものは殆ど食べない人間なので『少し濃い目のコーヒーを入れようか・・・』とも思ったが、
ここは思い切って先日インターネットで見つけたコーヒーメーカーであるPD-1を使ってみることにした。
『お手軽簡単に本格派エスプレッソを!』
なんて売り文句に惹かれ、ついつい衝動買いしてしまったコーヒーメーカーだった。
甘いもの+午後の憂鬱・・・ときたら、やはりここはエスプレッソでリフレッシュを図るべきだろう。
鼻歌まじりにパックをセットし機械の抽出ボタンを押せば、途端に漂いだす濃厚で芳醇な香り。
ミルクスチーマーまできちんと付属していて、こいつの前に立ってしまえば喫茶店のマスターにでもなった気分になれる。
『お手軽簡単に本格派』・・・とは良くつけたキャッチコピーだと関心すらしながら、抽出が終わるのを待つ。
キッチン中に拡がった香りに我慢ができなくなってきた頃、ようやく臨時の喫茶店マスターは終わりを告げた。
エスプレッソ1杯分の粉がタンピングされ詰め込まれているカフェポッドをゴミ箱に捨て、ドーナツ2つとエスプレッソ片手にいそいそと書斎に戻ることにする。
目的地は書斎の南側に面した開放感漂う窓辺だ。
普段は打ち合わせスペースとして編集の人間が来た際に使用している空間だが、ゆったりしたソファに座れば、時の経つのも忘れさせてくれるほど寛げる。
窓の外では相変わらず変わらない灰色の空が広がっているが、今の私の心は清涼感とも取れる感覚が広がっていた。
エスプレッソにドーナッツ。
気分を変えたくなったら、こんな組み合わせもいいだろ?
「或る小説家の私小説 2006年11月27日」 より抜粋
11月も半ばを過ぎ師走の足音も近づきつつあると言うのに、今日も雨はやむ気配が無い。
『底冷えのする寒さ』
今朝のニュースで女性アナウンサーが言っていた、そんな言葉が頭をよぎる。
こんな日は暖かい物でも飲みながら、ゆったりと窓辺で時が流れるのを楽しむのもいいのかもしれない。
普段仕事に追われ、ゆったりとした時間を過ごせない自分にとって、午後のコーヒーブレイクは一日の休息の中でも唯一といっていい楽しみの一つなのだ。
「確か差し入れで貰ったドーナッツがあったな・・・」
そんな事を呟きながら書斎のドアを開け、キッチンスペースに向かう。
退屈な仕事から解放され、自然とキッチンへ向かう足取りも軽い物となっている。
人間なんて本当にげんきんなものだ、なんて思ってしまう瞬間でもある。
キッチンにたどり着くとすぐに、編集の人間から貰ったドーナッツの箱を見つける。
箱の中を覗き込むと、オールドファッションやフレンチクルーラーなどの定番的ドーナッツが並んでいた。
私は普段は甘いものは殆ど食べない人間なので『少し濃い目のコーヒーを入れようか・・・』とも思ったが、
ここは思い切って先日インターネットで見つけたコーヒーメーカーであるPD-1を使ってみることにした。
『お手軽簡単に本格派エスプレッソを!』
なんて売り文句に惹かれ、ついつい衝動買いしてしまったコーヒーメーカーだった。
甘いもの+午後の憂鬱・・・ときたら、やはりここはエスプレッソでリフレッシュを図るべきだろう。
鼻歌まじりにパックをセットし機械の抽出ボタンを押せば、途端に漂いだす濃厚で芳醇な香り。
ミルクスチーマーまできちんと付属していて、こいつの前に立ってしまえば喫茶店のマスターにでもなった気分になれる。
『お手軽簡単に本格派』・・・とは良くつけたキャッチコピーだと関心すらしながら、抽出が終わるのを待つ。
キッチン中に拡がった香りに我慢ができなくなってきた頃、ようやく臨時の喫茶店マスターは終わりを告げた。
エスプレッソ1杯分の粉がタンピングされ詰め込まれているカフェポッドをゴミ箱に捨て、ドーナツ2つとエスプレッソ片手にいそいそと書斎に戻ることにする。
目的地は書斎の南側に面した開放感漂う窓辺だ。
普段は打ち合わせスペースとして編集の人間が来た際に使用している空間だが、ゆったりしたソファに座れば、時の経つのも忘れさせてくれるほど寛げる。
窓の外では相変わらず変わらない灰色の空が広がっているが、今の私の心は清涼感とも取れる感覚が広がっていた。
エスプレッソにドーナッツ。
気分を変えたくなったら、こんな組み合わせもいいだろ?
「或る小説家の私小説 2006年11月27日」 より抜粋
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